NVH(騒音、振動、ハーシュネス)測定技術が自動車の進歩を形作る

環境に関する懸念により、CO2排出規制はますます厳しくなり、自動車開発に大きな変化をもたらしています。従来の燃焼エンジンから電気式パワートレインへの変化は、NVHエンジニアリングにとって難しい課題を提示します。キスラーは柔軟性の高い効率的な測定ソリューションにより、こうした課題に応えています。

NVHは「Noise、Vibration、Harshness(騒音、振動、ハーシュネス)」の略語であり、車両の音響および振動挙動のあらゆる側面が含まれます。現在、こうした問題への注目が集まっている理由として、車両やパワートレインのNVH挙動の最適化が長寿命の信頼性の高い製品作りに役立つことが挙げられますが、それだけではなく、乗員が車両の品質をどのように感じているかについても特徴付けられます。こうした開発により、NVHは自動車の進歩において重要な要因に変化しました。その最終的な目標は、乗り心地やドライビングプレジャー、ブランドイメージをこれまで以上に高めることです。

NVHの観点から見ると、内燃機関と電気モータは基本的に異なる特性があります。しかし、エンジニアでなくとも、スポーツ性能とエンジン出力に付随する低く唸るような音が、ホイッスルのような音を発する推進源に変わりつつあることは自明のことです。この種の高周波数の音色はエンドユーザの耳には聞き慣れないものであり、耳障りに思える可能性があります。その他にも、エンジンの燃焼時の「マスキング効果」と呼ばれる現象がなくなり、他の音に気が付きやすくなるという点もあります。つまり、電気モータ搭載車では、道路やタイヤからの騒音、風や換気による騒音が車内でよりはっきりと聞こえるようになり、ユーザの快適さにマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

eモビリティはNVHへのアプローチをどのように変化させているか?

NVHエンジニアの主要なタスクは、パワートレインによって生じる騒音や振動を定量的に評価し、それらが乗員にどのように伝わるかを理解することです。こうした側面を理解することは、車両設計がユーザの期待を満たすようにするために根本的に重要な要素となります。一般的なエンジニアリング手法では、すべての騒音を2つのカテゴリーに分類します。1つは空気により生じるもの、もう1つは構造により生じるものです。最初のカテゴリーには、パワートレインから発生し、エンジンベイを通り、空気を伝って主に乗員に届く空中の騒音が含まれます。他方、構造由来の騒音は、大部分が振動で構成されます。振動は駆動システムからベアリングや取り付けポイントを介して車体構造に伝わり、そこから乗員に届きます。これら2種類の騒音への寄与成分を分けることは簡単ではありません。しかし、車両の設計フェーズで実施しておけば、最終的にNVH性能を改善することができます。

実際には、内燃機関から電気モータへの切り替えにより、空気由来の騒音伝達が劇的に削減されることが頻繁に観察されます。これは駆動システムの性質によるものですが、電気モータの音挙動は、高周波数で何らかの局所的な問題を引き起こす場合があります。構造由来の騒音寄与成分の低減も見込まれますが、その量はそれほど大きくなく、より重要なことに、この場合は騒音レベルの低下があまり明らかではありません。問題は、電気モータと内燃機関の動的挙動には非常に大きな違いが存在することにあります。このことから、車両フレームへの力の伝達経路に十分に注意する必要があり、測定と理解が欠かせません。

これらの要因に加えて、構造由来の騒音の伝達は、車両のアーキテクチャにも影響されますが、ここでも今まさに変化が進行しています。バッテリー駆動の電気自動車は、比較的重量のあるバッテリーパッケージを搭載し、これが車両全体のNVHフットプリントに影響します。OEM各社は現在、航続距離とバッテリー容量の向上に集中的に取り組んでいるため、バッテリーパッケージが近い将来軽量化する可能性はあまり高くありません。こうした理由から、振動が誘発する影響の評価は、NVH挙動を効率的に最適化する上で重要な役割を果たします。これらに加えて、構造由来の騒音伝達に伴う問題は解決が難しく、また、これらの騒音は、一切の影響を排除しようとした場合に音響ソリューションを特別に設計する必要がある周波数範囲において発生します。

これらの変更や課題のすべては、車両アーキテクチャと開発プロセスに影響を与えるだけでなく、測定チェーンが満たすべき正確で信頼できる測定のための要件にも影響を及ぼします。ここで第一に求められるのは、柔軟性の向上です。キスラーは、NVHアプリケーション用の高性能で使いやすい測定ソリューションを提供することで、自動車メーカーや車両開発会社をサポートする体制を整えています。

特定用途向けの力測定ソリューション

構造由来の騒音伝送を正確に評価するには、振動発生源(パワートレインなど)と車両フレームの間の境界に作用する力を知ることが必要です。その結果は、ホワイトボディの最適化、伝達経路解析(TPA)、およびブロック化した力測定など、広く使用されるプロセスにとって重要な情報となります。こうした用途では、特定の形状的な制約や、従来の力センサの能力を大幅に超えた独自の動作負荷条件が生まれます。

これらの厳しい要件を満たすため、キスラーでは圧電式(PE)測定技術に基づくカスタマイズソリューションを提供しています。用途ごとに正確に調整することができ、境界面力を極めて高精度で測定できます。その高い剛性により、PEセンサは高周波数を達成できます。測定範囲が非常に広いため、さまざまな大きさの動的力を簡単に捉えることができます。過負荷保護設計や、繰り返し負荷時の長い耐用年数などの付加的なメリットにより、PE測定技術は、NVH用途に有効な手法となります。このように、PE測定技術は、現在だけでなく将来においても、モビリティが提示する課題への取り組みに最適に対応します。

キスラーは、PE測定技術における60年以上に及ぶ豊富な経験をベースに、最大6つの成分(3つの力と3つのトルク)を正確に測定できるソリューションを提供し、お客様ごとに異なる形状および負荷要件を満たすことができます。設計やエンジニアリングから製造、試運転、サービスまで、お客様が必要とするすべてを一括して提供することができます。

加速度測定の課題を克服

キスラーでは、自動車用NVHポートフォリオの一部として、車両およびパワートレインの多様な用途で使用できる幅広い加速度センサを提供しています。キスラー独自のPiezoStar結晶技術に基づいた加速度計は、燃焼ベースのパワートレインでの高温測定に特に適しています。例えば8766Aセンサでは、優れた熱的安定性のおかげで、極限条件下であっても、正確で信頼できる測定のメリットが得られます。電気モータへの移行が進む中、接地絶縁、低加速度測定範囲、広い周波数範囲などの機能の重要性が高まっています。

8764B、8763B、8766Aなどのキスラー製センサは、すでにこうした機能を備えているため、電気モータを使用した用途に対応し、さまざまな測定課題に対応する確かな技術を提供しています。重量のあるバッテリーパックと軽量の車両設計では、運転特性と安定した乗り心地を慎重に評価する必要もあります。こうした場面では、極めて低い周波数振動が存在する場合であっても、8316Aや8396Aなどの容量型MEMSセンサを使用すると、高精度な測定が可能になります。

非常に柔軟なデータ収集と解析

NVHの新たな開発目標を達成するための作業では、効率的な、すぐに利用できる解析プロセスが要求されます。この分野の開発者をサポートするためにキスラーが最近発表したKiSUITE Analysisは、直観的に操作できるパワフルなデータ解析プラットフォームであり、データの評価とプロセスのカスタマイズに高度な自由度と柔軟性をもたらします。イノベーションと創造性を育む環境を生み出すように設計されたこのソフトウェアパッケージは、多用途に使える包括的なNVH機能が含まれます。KiSUITE Analysisは、キスラーの既存のKiSUITEソフトウェアを補完する製品であり、このソフトウェアには車両とパワートレインの包括的なNVH解析用の多数のアプリケーション志向のソリューションがすでに多数含まれています。

キスラーはまた、データ取得用のNVHハードウェアのラインナップを拡充しました。KiNOVA Proはさまざまなカードを使用してカスタマイズして、入出力可能な種類を広げることができると同時に、統合型スタンドアロン機能により、システムの多用途性は維持されます。

将来のNVHに対応

こうしたパラダイムシフトにより、共有エンジニアリングのアプローチや凝り固まった信念に関する疑問が提起されています。製品開発や性能測定に使用される方法にも変革が必要です。現代のNVHエンジニアが抱える主な課題の1つが、車両設計と、エンドユーザが望む音響学的快適さとのバランスを取ることです。最終的に、このオープンエンドのプロセスから、乗り心地、運転体験、ブランドアイデンティティに新たな枠組みが生まれるかもしれません。自動車やパワートレインのNVHに関しては、今後の動向が注目されます。キスラーは、最大級の効率を実現するカスタマイズ可能な測定ソリューションにより、お客様をサポートします。

 

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