5Gは、それなくして他のトレンドを実現できない、そんなツールです。


ウィンタートゥール,2020年2月 —— パーデルボルン大学の自動車軽量設計講座の工学博士Thorsten Marten氏にインタビューし、最新の技術トレンドと測定技術の役割について、さらに氏が現在の仕事と未来に何を望んでいるかについてお話を伺いました。
自動運転、5G、ビッグデータといったテクノロジーは互いに影響を与え合っており、リアルタイムの測定技術が欠かせません。
自動運転、5G、ビッグデータといったテクノロジーのメガトレンドは互いに影響を与え合っており、リアルタイムの測定技術が欠かせません。

電気自動車、モノのインターネット(IoT)、ビッグデータ、自動化、人工知能、自動運転、5Gなど様々ありますが、特に気になるトレンドはどれですか?

基本的に、こうしたトレンドの多くは互いに影響し合っていますし、交差し合う点も数多くあります。私はクルマで通勤していますので、例えば「自動運転」というテーマには大いに関心がありますね。運転中、クルマの中で多くの時間を「ムダ」に過ごしているため、クルマが自分で運転してくれるようになれば、こうした時間をより有意義に過ごせるようになります。

世界を持続可能に変化させるには、どのメガトレンドに最もポテンシャルがあるとお考えですか?

モビリティというテーマやその他の多くのメガトレンドについては、全体を観察しなければなりません。そこで重要になるのは、ITインフラストラクチャ、特にデータ伝送の分野です。様々なプロセスをリアルタイムで制御したい、コントロールしたいと思えば、結局のところ、5Gが提供できるよりも速い伝送速度が必要になってきます。データ伝送がいつの日か、テラヘルツレベルで行われるようになって初めて、他のメガトレンドを扱えるようになるわけです。したがって、この5Gがデータ伝送でカギを握ると言えるでしょう。

5Gが、他のすべてのメガトレンドに対して最も大きな影響を及ぼすトレンドであるとお考えなのでしょうか?

その通りです。AI、ビッグデータ、IoTを実現するためには、5Gが欠かせないからです。すべてを定常解析で考えて評価することもできますが、興味深いのは、自動運転やドローンといったモバイルの分野です。その場合には、装置がリアルタイムで互いに通信する段階に達しなければならないでしょう。そのため、5Gは、それなくして他のトレンドが実現しない、そんなツールなのです。もちろん、ビッグデータも極めて興味深いテーマです。例えば、AIを使えるようにするには、何らかの方法でデータを集めなければなりません。しかし、十分高速にデータを伝送できなければ、全てをリアルタイムで実現することなどできません。

このトレンドに伴う最大のリスクはどこにあるとお考えですか?

この分野の最大の課題は、データセキュリティというテーマ、つまりデータの悪用やプロセスの不正操作です。もし全てをリアルタイムにデジタルでネットワーク化するには、つまり全ての人が他の全ての人と通信するのであれば、開かれたネットワーク、インターフェース、それにプロトコルが必要になってきます。そうなれば結局のところ、不正操作を受ける可能性も開かれてしまうことになるのです。

これは、あなたが大学で最も価値を置いているテーマでもあるのでしょうか?

大学ももちろん、この問題に共に取り組まなければなりませんし、この分野における知識を生み出さなければなりません。この点で、パーデルボルン大学は実に充実した態勢を整えています。私たちはこの分野を大変重視しているためです。特に重点を置いているのは、オプトエレクトロニクス、フォトニクス、それにインテリジェントな技術システムです。私たちは幅広いノウハウを活用し、重要な課題に対応することができます。大学は、この分野で明確な立場をとらなければなりません。データの安全性は当然のことながら、社会全体で課題となっているテーマでもあるからです。

これは産業界の取引先からも要求されることなのでしょうか?

もちろん、これは産業界にとって重要なテーマですし、実際、差し迫った問題でもあります。自動車産業全体を見渡して、この分野の展開に注目すれば、市場に様々な動向があることが分かります。ここで中心となっているテーマは、自動運転と駆動装置の電動化です。このことは当然、私達にもそのまま跳ね返ってきます。大学とは通常、もっと基本的な問題に対して、価値中立的に答え、それに応じた知識を生み出すところです。しかし当然、要求やインプットが産業界からもたらされることもあり、経済的な側面も満足させる必要があります。

センサや信号処理に日々携わっていらっしゃいますが、その活動の中で、測定技術に関して何が最大の課題となっているのでしょうか?

我々は、特定の産業分野ではなく、大学に所属しています。つまり、学生たちや若い研究員たちと共同で多くの活動を展開しています。彼らは一時的に、一定期間のみ活動に参加し、学位をとれば大学を去っていきます。つまり、専門的な人員は常に入れ替わっており、新たなメンバーには訓練を行い、導く必要があります。そのため、我々が利用する測定技術は、訓練の手間をできる限り小さなものにしなければいけません。ですから、測定技術は直感的に操作できて、壊れにくいものがベストです。さらに、我々が使用する測定技術は、実に多岐にわたります。我々の研究所には数多くの専門分野があり、様々な研究課題に取り組んでいます。例えば私達の講座では、準静的設計からクラッシュに至るまで多岐にわたって扱っており、単純なひずみゲージ式ロードセルや超高速レコーダなど、あらゆるものを使用しています。つまり、視野に入れなければならないことも広範に渡っています。

膨大な計測データをどのように管理していらっしゃいますか?

特に重要なのは、リアルタイム制御とコントロールです。極めて複雑な計測システムにセンサを統合し、計測データを速いデータ伝送速度で上位システムに伝送することは、重要な課題です。その解決の糸口となるのは、センサシステムとアクチュエータシステムのコンビネーション、つまり分散コンピューティングユニットの統合です。インテリジェントな制御アルゴリズムがあれば、多様なコンポーネントを監視しつつ、同時に制御してコントロールできるようになります。

未来の測定技術にとって、さらに課題となることとしては何があるでしょうか?

特に重要なのは、リアルタイム制御とコントロールです。極めて複雑な計測システムにセンサを統合し、計測データを速いデータ伝送速度で上位システムに伝送することは、重要な課題です。その解決の糸口となるのは、センサシステムとアクチュエータシステムのコンビネーション、つまり分散コンピューティングユニットの統合です。インテリジェントな制御アルゴリズムがあれば、多様なコンポーネントを監視しつつ、同時に制御してコントロールできるようになります。

実験室ではキスラーの製品をお使い下さっているとのことですが、具体的にどの製品ですか?

10年以上前から、私達はキスラーの力センサおよびチャージアンプを用いて作業しています。特に衝突試験の分野では、キスラーの製品を頼りにしています。また、サービスの面でもとても満足しています。これが、何度もキスラーの製品を購入している大きな理由です。

自由に選択できるのであれば、どんな測定技術製品を希望されますか?どんなものが作業の負担を軽減できるのでしょうか?

作業をかなり軽減してくれるものと言えば、総合的なデータ管理システムですね。そのシステムがあれば、測定作業中に全てのデータをリアルタイムでクラウドにアップロードして管理し、クラウド上で解析や評価を行えるようになります。残念ながら今はまだ、そうしたシステムは構築できていません。若い研究員達は目下のところ、データを分散して保存し、それから手動でデータベースに登録しなければなりませんが、この問題はいずれ改善できると思います。キスラーでは、特に測定誤差を同時に計算する新しいコントローラがラインナップに加わりましたが、これが私たちにはとても興味深いです。拡張カードを何枚も追加しなくても何もかも統合されている測定装置があれば、それが理想的ですね。測定ケーブルを使用せず、全て無線であればなお良いです。

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