橋の現状を把握するには
方法は3つあります。1つ目は、橋を保護するために大重量の車両の通行を禁止することです。車両の重量はその4乗に比例する影響を道路インフラに及ぼすため、橋の寿命にも大きく影響します。2つ目は、単位時間内の車軸荷重を測定することです。この値から路面および構造物への全体的な負荷に関する情報を知ることができます。
3つ目は、橋自体の変化を監視することです。この場合は、加速度センサによる計測システムを用いて構造物の重要な変化や橋の「健康状態」に関するデータを収集することになります。このような計測方法は「構造ヘルスモニタリング(SHM)」あるいは「橋梁ヘルスモニタリング」と呼ばれています。構造物の動きと振動が明らかになると、負荷状態や腐食の可能性がわかってきます。キスラーグループは、橋梁を監視するのに適したたくさんの実績ある製品を提供しており、貴重なインフラの維持と安全性に寄与しています。以下では、技術的基礎と応用事例をご紹介していきます。
特に橋梁ヘルスモニタリング用として設計されたキスラーの加速度センサは交通・風・温度変化による影響を測定するために世界中の橋梁で採用されています。この計測システムは、デンマークでバルト海をまたぐグレートベルト橋に設置されているほか、中国の揚子江、米国のミシシッピ川に架かる橋でも使われています。ミネソタ州ミネアポリスでの崩落事故後、2009年に新たに建設されたの州間高速道路35Wの橋には、キスラーの加速度センサが26個設置されています。そのうち12個はコンクリート橋脚中央部の振動を測定、14個は橋全体に分散して設置され、より長期的なモード解析、特に橋の損傷発見につながる固有振動の監視に用いられています。
このような測定が成功するかどうかは、感度、周波数範囲、温度の安定性、直線性などの特性に左右されます。キスラーの静電容量型MEMSセンサと圧電式IEPEセンサは、さまざまな使用条件に適合する実績のある技術です。IEPEセンサは比較的小規模の構造物や高い振動数の計測に適しており、MEMSセンサは大型の構造物や直流ないし低周波信号の測定に使用できます。さらに、ケーブルの長さ、電磁波干渉保護、温度範囲、温度安定性といったパラメータを考慮する必要があります。たとえばキスラーのMEMS加速度センサ(型式8316A)の場合、周波数範囲は0~1,500 Hz、使用温度範囲は–55~+125℃、最大ケーブル長は400 mとなっており、全体のノイズレベルも極めて低く抑えられています。
過負荷による損傷を予防
風速計、歪センサ、リニアポテンショメータ、GPSなどで構成された計測システムに適切な加速度センサを組み込むことで、ジェノバやミネアポリスのような事故は防止できる可能性があります。こうした橋梁計測システムの重要な要素は、商用車やその積荷による負荷の詳細データを提供するWIMシステムです。
キスラーのWIMシステムは、路上を走行中の車両の重量を測定します。その基礎となるセンサは車線数に関わらず路面下に直接埋め込むことができ、測定結果は直ちに評価できます。世界中で5万個以上使われているLineasクォーツセンサは圧電式で、極めて正確に計測できるだけでなく、メンテナンスフリーで長期にわたり安定しています。センサ長は各種用意されており(1.50 m、1.75 m、2.00 m)、さまざまな路面に埋め込むことができます。こうして設置されたセンサは車両の速度によらず車軸荷重と全重量を高い信頼性で測定します。温度に左右されない高い精度(最大2.5%)のおかげで道路とその使用状況に関する総合的なデータを収集でき、過積載車両の橋への乗り入れを阻止できるようになります。さらに、橋の修繕に入る前に、安全な片側通行が可能かどうかといった判断の参考になるような重要な情報を提供することができます。
WIMセンサとそれに付随する評価・解析システムに加え、キスラーはシステムの性能と寿命を最適化するために各種サービスを提供しています。これにはリモートまたは現地で実施する校正サポートや、センサの最適な設置位置を決定するための支援サービスも含まれます。センサの設置位置や路面状態によって、以後の測定データが大きな影響を受ける可能性があるためです。